トイレから戻ったら、自分の席に知らない女が座っていた。
そこは俺の席だからと言って、退いて貰えばいい。そう言ってくれるな。全員怖い。入室した空気の気流の流れで、自分が雑魚だとバレるんだ。
ほら、自分はただ、机にかけておいた弁当を回収したいだけの男なのに、彼女らはまるで不審者に近づかれたみたいに笑いをやめる。取るに足らないちっぽけな存在は「そこをどけ」と自分の権利を主張したり、抗議の意味を込めて睨んだりとかいうことはしないのに、得てして一方的に害意を向けられる。喋ったことない奴らに何故か嫌われているのだ。
かと言って、件の女のような図太さも持ち合わせない繊細な男、俺。空席を押し退けて教室をあとにする。昼食の時間は無限ではないのだ。食堂へ。同じ制服の群れでごった返すのを確認した瞬間、踏み入らず、中庭へ。 昨晩の雨のために、辺りは露に包まれていた。自分しか居ないのを確信して、よし、と内心頷く。が、他多数が中庭で食べるのを諦めたのと同様に、濡れたベンチを確認して校舎へ引き返す。
結局は、個室が最強だった。これこれ。最初からここに戻ってくればよかったのだ。変顔をしても、変な声を出しても、ここにいる限り、それが俺だと認識されることはない。──けれども、ちっとも食欲がわかないのは、この場所の本来の用途を意識してしまうからだ。きっとそう。
たかが同級生の視線に怯えたり、胃液が込み上げてくるような惨めさを感じたりは、しなくていい場所のはずで、であるから自分は、ここにいる限り安心すべきなのに。
何もいらない
4/21/2026, 9:02:41 AM