となり

Open App

吹き荒ぶ嵐で覆われた日だった。
春爛漫とはかけ離れた曇天が暗幕を垂らし
怒り狂うカミナリ様と手を組んで地上の生き物を嘲笑う。
ごうごうと、飛雨に降られる桜花たちは恐々さざめき
散っていく花弁を追いかけて枝を伸ばした。
けれど、無情にもはらはらと、散ってはまた散ってはまた
涙するように零れていくのだ。

「散るために生まれたわけではないのに」

そう言って俯くだけで
またひとひら、攫われていく不条理を思った。

4/4/2025, 11:53:48 AM