Open App

ここではないどこか
目が覚めた。
暖かい日差し、ふわりと揺れるカーテン。
白を基調としたきれいな部屋。
机にはお花が飾られていた。
今寝ていたのはふわふわのベッド。
……ここはどこだ?
全く見覚えがなかった。
とにかく一階へ降りた。
わかったことがあった。
この家はお花畑の中に建っている。
誰の家か分からないが、
サンドイッチがあったので心の中で謝りながら食べた。
家を出た。
服はなぜかパジャマから洋服になっている。
しばらく歩くと、街に出た。
石畳の道と商店街。
近くにあった飴細工の店を見て思い出した。
ここは、幼い頃からまあまあな頻度で来る、
夢の中の世界だ。
そうだ、ここが現実で
現実と思っていたのは夢だ。
そう自分に言い聞かせ、
やりたいことを満喫しに足を進めた。
小さい頃店の前で転び、大泣きしていた私に飴をくれた
飴細工売りのおばあちゃん。
駅前の花屋の前のベンチに座っている、
体の透けた、(本人曰く、幽霊)話の面白いおじいさん。
公園で私を見ると本をもって
「読み聞かせのお姉ちゃん!」
と駆け寄ってくる子ども達。
表通りのカフェは若い夫婦が経営していて、
お姉さんはとても優しく、
お兄さんは気前がいい。
いつも人気の店だ。
一日中思い出めぐりをした。
また、花畑の家に帰り、幸せいっぱいで眠りについた。

ピピピッピピピッ、ポチッ。
「……こっちが現実ってことか。」
がっかりした。
でも、少し気分は楽になった。
あの夢は、逃げ出したい、ここではないどこかに行きたい
と思ったときに見る夢。
また、いつか。
そう思い、また一日がスタートした。

6/27/2024, 10:50:35 AM