長月より

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一年前


早苗「一年前か。僕らが何をしていたか覚えているかい?」

翔吾「担任とお前の鬼ごっこに付き合わされてさんざんだった」

早苗「懐かしいなあ。あの時は缶けりをして遊ぼうと自販機のゴミ箱を漁っていたんだったな」

翔吾「それでてめえが缶けって担任の背中にクリーンヒットして怒られたんだろうが」

早苗「ええ、違うよ。ける前に怒られて僕が先生が鬼だよと言ったあとに缶けって逃げたんだよ。僕は先生に当てていない」

翔吾「そうかよ。で、逃げてたら俺を見つけて一緒に逃げるぞ~! って引っ張って逃げたと」

早苗「君も缶けりに加わりたいと思ってね。なかなかよかっただろう?」

翔吾「よかねえよ。ただでさえ入学式に目ぇつけられてたのにあれからお前のお守り役押し付けられるようになったんだぞ」

早苗「ふふ。でも、君といると楽しいし飽きないからそれで良かったと僕は思ってるぞ」

翔吾「ふーん、そうか。ところでよ、お前今日は何しようとしてた?」

早苗「え、あーちょっと、野球部の子にバットを借りてホームランを打とうとしたらバットがすっぽぬけてしまった選手の物真似をしようとしてたところで──」

翔吾「ほー。そうか。バット返してこい」

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学生の頃は一年前って、めちゃくちゃ懐かしいと思いながらこんなことしたよね~と楽しそうに語っていたのに、大人になってからの一年前はつい昨日の事じゃないのか? あれ? と思うことが増えてきました。

6/16/2023, 10:50:33 AM