ビニール傘越しに眺める雨が好きだ。
あの独特な素材が雨を叩く音と、絶対的に守られている透明な安心感の中に宿る不幸みたいだ。けれどもきっと同じような人間に、碌な人はいないのだろうな。全員がその空間に浸っているだけだ。
私は昔から音楽に救われて生きていたけれど、音楽すらまともに聴けない日がある。人の創作なんかに救われてたまるかという日や、どんな歌詞を聴いてもその全てが自分を責めているように感じる日がある。そんな時は雨音を聴く。今時のスマートフォンは便利で、ワンタップで雨音が流れるようになる機能などが存在している。(そのせいで何度も意図せず世間に雨を降らせて驚かれたことも多々あるが。)雨音は何にもならず、ただ冷たく地面を叩くだけだ。
誰にでも平等で、初めからどこか不幸で、湿っていて。
それがとても、好きだ。
6/11/2025, 12:16:36 PM