泡沫

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教科書には何でも書いてあった。
学ぶべき漢字や読むべき文書、役立つ記号や公式、日常に潜む物質の事や、先駆者たちの記録や言葉、不可解な異文化言語。
どれも教科書に書いてあって、どれも必要だと言われてきた。だからそれを読んで学んで紙の上で試したりもした。

それでも──教科書通りにはいかない。

コミニケーションのとり方、普段使うことの無い計算、見えやしない何か、普段は意識しない過去、覚えたくもないカタカナ。
見て、聞いて、書いて、触って、声に出しても。それらは今の失敗の取り戻し方なんて書いてない。
こんなもの、所詮"書いてあるだけ"なんだ。
詭弁、冒涜、傲慢、エゴ、そんなふうに呼ばれるものばかりで、何一つ"今"を見ていない。未来か、過去か。全て記録だから。全て過去のことだから。必要だと言うのも、きっと誰かの轍だ。

──でも、何もかも上手くいくなんて……そんな馬鹿な話はないんだ。

僕たちの明日は、誰かの上にあるから。足跡を辿って生きているから。決められたレールの上に立っているんじゃない。それも僕らのひとつなんだ。
失敗はしたくない。学べるのは『失敗しない方法』だよな。そんなもの体験せずに生きて行ければ一番良い。
でもさ。痛みは、悲しみは、苦しみは、別れは、体験しなくちゃ分からない。体験しなくちゃ誰かに伝わらない。気づいているかい?僕らもまた、誰かに足跡を残しているんだ。
そしてまだまだ先も僕らは誰かの轍を踏んで歩いてく。そしてその先を、誰も踏んだことの無い道を歩くんだ。その轍は僕らの"教科書"。見るだけだ、辿る必要なんてない。
キレイな文章も、堅苦しい公式も、訳分からない御名前も、会ったことない人の遺影も、世の中に混じった異言語も。僕らで踏んで歩いていこう。
前を向いて、自分だけの下手くそで、ぐちゃぐちゃで、キレイだなんてとても言えない、でも力強く、くっっきりと、大きな、前を向いた足跡を残そう。
それを見てた誰かが誰かなりの足跡を残すんだ。
僕らは、世界で、宇宙で初めての一人なんだ。
史上初の僕らは……最後には笑って見返してやろう。

だって僕らは────















幸せになるために生まれてきたんだ。

6/28/2021, 3:32:19 PM