よらもあ

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わたしはなんだ?

いくつかの頭がある。
男の頭だ。戦士の頭だ。これはよく見る、狩人の頭だ。耳が尖っていたり、角が生えているのもある。蠍の頭に、鷲の頭まである。彫刻のような青年の頭もあるぞ。

いくつかの身体がある。
男の身体だ。戦士の身体だ。これはよく見る、馬の身体だ。翼が生えているのもあるぞ、蠍の身体にだ。山羊の身体もある。尾だけが蠍のものもあるな。

いくつのかの道具がある。
剣だ。槍だ。これはよく見る、弓矢だ。笛やカスタネットなどの楽器もある。

いくつかの名前がある。
しかしその殆どは欠け、崩れ、曖昧になっている。

あらゆるモノが、あらゆる性質が混同され、かと思えば引き剥がされる。
愛を乞うた妻の顔も名前も姿も朧げだ。
己より大切だと抱き締めた子どもたちの顔も名前も姿ももう星空に溶けた。

わたしはなんだ?
わたしはどうしてここにいる?
わたしはなんのために生まれた?
なぜ意識がある?
なぜ心がある?

────ああ、こんなに面白いことが世の中にあったとは!

この星空の下で生まれた文化が、文明が、どれだけ尊いことか!

これからも生まれ続ける!
これからも紡がれ続ける!

わたしはわたしだ!
この星空がある限り、それを見上げる羊飼いがいる限り!

この営みのなんと愛おしいことか!



“星空の下で”

4/6/2024, 5:36:49 AM