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「あっちー。どうかしてんだろこの暑さ」
「地球が悲鳴上げてんのよ、二酸化炭素はもういいですって」
「んなもんもうどうしようもねえだろう。俺らは生きてる限り二酸化炭素出し続けるんだから」
そう言って山田は、地球温暖化はどうの、世界の偉い人達はどうのと小難しい話をつらつらと話し出した。
花村はそれに適当に相槌をうって、半分くらいを右耳から左耳へと流す。
誰かが走って去ったのか、ばたばたと廊下が騒がしくなった。山田が顔を上げる。
「何だ?」
「…うちのクラスの一軍女子達よ。この間あんたと付き合ってんのかって聞かれたわ」
「何だそれ」
「まああんたも夏期補講の放課後はしょっちゅう私とこうやってくっちゃべってるじゃない。はたから見たらそういう風に見えるんじゃないの?」
「うええ。何だそれ。俺ら別にお互い話したいこと話してるだけじゃん。性別越えた普通の友達だけど」
山田はべろっと舌を出した。花村ははため息をついて言った。
「何でだか年頃の女っていうのは、そういう風に異性のコンビを恋愛形の括りで見たがるのよ。まあ私から言わせれば下世話な勘繰りってやつだけど」
「理解したくないわ」
「私もしたくないわ」
二人して爆笑する。良い意味でお互いの違いを認め合って、でも気にし過ぎない関係が心地良かった。
花村がふと口を開く。
「みんなさあ、そんな大層なもんじゃないのに、ちょっと変わってるってだけですぐ取り繕ったりするじゃない?それこそほんと小さくて目立たない傷跡でも長袖着て隠すみたいなさ。そうじゃなくて、ほんとに人間として大切な部分は長袖着て温めといて、そうじゃない、素の方が楽って部分は半袖着て楽にしてればいいのになって思う。…私今良いこと言った?」
「プリント一枚」
「嬉しくねえわ」
澄み切った夏の午後の空に、二人の笑い声が染み込んでいった。

5/28/2023, 11:29:52 AM