最近、隣の席の奴とよく話すようになった。まぁはたから見たら俺が一方的に喋りかけてるだけなんだけど。でも喋れば喋るほど笑うようになったし、だんだん声も聞き取りやすくなってって、なんか今流行ってるアイドルの育成ゲーみたいな感覚で面白かったからよく喋りかけた。俺ほどじゃないけど顔整ってるし、声もよく聞いたらラジオとか向いてそうなぐらい聞き心地良かった。とにかく俺はそいつと友達になろうとどうにか立ち回っていた。
猫が好きだと言っていたから、ショッピングモールのゲーセンの近くに最近できたガチャコーナーで猫のキーホルダーを手に入れた。ショッピングモールは普段姉の荷物持ちで行かされるぐらいだから、自由に見て回れるのは友達と行く時ぐらいだった。誰から切り出したか忘れたけど、ゲーセンに行こうという話になって、それなりに散財しかけてからのガチャコーナーだった。
ガチャガチャってのはそれなりに高くて、それは一回400円だった。俺の分も欲しいなと思ったから800円が財布から消えた。カプセルを開けてみたら、1回目は灰色で、2回目は赤色だった。よく見たらそんなに可愛くなかった。一緒にいた奴らから散々言われたけど、俺は可愛いとひたすら主張した。そうじゃないとこの猫もあいつも可哀想だ。
翌日学校にその猫2匹を連れて行った。俺は毎朝隣の席のそいつに挨拶するのが日課だった。そいつは絶対俺よりはやく学校に来てた。今日もそうだった。
ちょっと悩んだけど、灰色の方を渡した。困惑したような目をしてたから色々説明すると、そいつは笑顔になって「ありがとう」って言った。でもすぐに照れたのか机に顔を伏せて、それから昼まで何も喋ってくれなかった。
帰る前も、俺はいつも声をかけた。
「大切にしてよ、それ。俺だと思って」
赤猫を揺らしながら、俺は冗談半分に言った。
「大切にする、絶対」
また気まずくなったのか、あいつは早足で教室を出て行った。俺は急かす友達の声を無視して、赤猫を見つめた。
最低400円でまた手に入るような小さな無機質な猫。あいつの大切なものになるにしては安っぽすぎる。
誕生日とかにはもっと良いのをあげたい。もっとあいつが喜ぶようなことがしたい。何が欲しいかよく知らないから、一度ショッピングモールに誘ってみようか。
4/3/2026, 9:53:07 AM