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【明日、もし晴れたら】2023/08/01

雨。

学校の帰り道も、雨。

ずっと遠くまで広がる田んぼも、雨。

遊びに行けなかった弟の表情も、雨。


雨。雨。雨。また、雨。


どこもかしこも雨ばかり。

雨のせいで靴下は濡れるし、田んぼも雨で水位が上がっ

ているし、しまいには不機嫌になると我儘ばかりな弟の

機嫌まで悪くなってしまう。

── 当の私も今日やろうと思っていたことがあったのに

珍しく私が決意して、今日こそ始めようと思ったのに。

はあ。

無意識にため息がつく。

暗い表情になりながらも、私は幼稚園の迎えに行って一

緒に帰ってきた弟と手を繋ぎ帰路へついた。

「ただいまあ。」

キッチンの奥にいるであろう母に大きな声で私たちの帰

宅を伝える。

「おかえりー。2人とも、手、洗ってきなさい。前に欲し

がってたアイスあるわよ。」

どこか腑抜けたような穏やかな調子で冷凍庫を指差す。

「ホント!?やったー!!」

弟はすぐにカバンを床に投げつけて冷凍庫に顔を突っ込

む。さっきまであんなに不機嫌だったのに、アイスだけ

で機嫌が戻るなんて羨ましい限りだ。


──── もう、いらないって言ったのになあ。


母さんはいつもすぐに私の言ったことを忘れる。正真正

銘のど天然なのだ。

私は目の前のアイスから目を逸らす。

「いただきまあす!」

目を逸らした瞬間、隣から美味しそうにアイスを頬張り

始めた音が聞こえてきた。



──── ああ、もう!


こんなだから一度決意してもまた逆戻りしてしまうの

だ。私は窓の外とアイスを交互に見比べる。


目の前には期間限定の高級アイス。

そして外は、大粒の雨が降りしきって暗くなっている。




────── いっか、明日、もし晴れたらやれば良いか。


私は冷凍庫にある苺アイスのカップを取り出してその中

のアイスを頬張る。高級イチゴの酸味と甘味が口いっぱ

いに広がった。


こうして私は、雨を理由に、今日から運動1時間と、糖分

軽減というダイエットの決意の開始を、1日だけ遅らせた

のであった。


たった、1日だけ。

8/1/2023, 10:47:18 AM