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 実家からみかんが死ぬほど届いた。今俺一人暮らしなの分かってる?ってくらいの量が届いた。冬といえば雪遊びよりみかんが先に出てくる俺でも流石に引いた。
 まあみかんに罪はない。なのでずっと出していなかった一人用のこたつを出して地道に食べ進めていたのだが。

「...なんで居るのお前?」
「いいじゃん別に。ちゃんとメールで来る予告したし。」

 いや、既読すら付けていないし返信もしていないのだから来てもいい理由にはならないと思うのだが。

「というかどうやって入った?戸締まりちゃんとしてたよな?」

 いくら治安がいい日本でも万が一の事がないとは言えない。だから俺は寝る前には必ず鍵と火の元を確認する習慣をつけている。

「まだ寝ぼけてんの?お前俺に合鍵渡したの覚えてないの?」
「あ」

 そういえばそうだった。こいつがいつも唐突に来るときチャイムを連打されるのが鬱陶しくて、勝手に入れと半ば無理やり合鍵を渡したんだった。
 
「お前大丈夫?もう一回寝てくれば?」

 寝ぼけているのはお前が早朝の5時に来ているからなのだが。俺はさっきまで布団にいたのに、テレビとこいつの笑い声で起きてしまった。
 そしてその当の本人は悪びれる様子もなく俺のこたつでみかんを貪っている。俺はため息をつきながら、

「...誰のせいだと思ってる?とりあえず寒いからどけ。」

 俺は押しのけるようにこたつに入り込んだ。買ったのも出したのも俺なのだからいいだろう。

「ちょ、冷た寒っ狭っ!?入るにしても言ってよびっくりするから!」
「うるさい」

 こたつの暖房が点いてからしばらく経っているからなのか、こいつの体温が高いからなのか知らないが、いつものこたつよりぬくかった。
 俺は文句を無視しながらかごに大量に盛られたみかんを一つ手に取る。そして皮を剥き実を一つ口に入れた。

「あーそういえばお前白いやつ取らないのか。」
「別に死ぬ訳でもないしな。...お前はめちゃくちゃ丁寧にとるな」

 こいつは意外と几帳面で、剥いたら皮はひとまとめにして置いてあるし、白いやつは徹底的に取る。それに対して俺は皮はてきとうに剥いて後で掃除すればいいので放っておく。白いやつは一切取らない。

「だって噛んでくとそれだけ口の中に残って気持ち悪いんだよ。」
「噛まずに飲み込めばいいだろ。」
「それはお前だけ。」

 こいつは白いやつは徹底的に取るくせに剥くのがとても早い。何時から来ていたのか知らないが少なくとも10個は余裕で超えているだろう。

「あともう深夜に家に押しかけてくるのをやめろ。電気代も馬鹿にならん。」
「みかんの消費手伝ってるんだから許してよ...はい、1個取り終わったから食べていいよ。」

 返事をする間もなく実を1つ口に押し込まれる。白いやつは全部取られているので舌触りが良かった。

「...ん、うまい」
「でしょ。はいあげる。」

 俺は不純物が取り除かれた、やけに甘く感じるみかんを噛み締めた。
 ...あと1月はみかんが続くと思っていたのだが、思ったより早くみかんが尽きることになりそうだ。

12/29/2022, 1:42:15 PM