作家志望の高校生

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「暇だし暑いし肝試し行かね?」
相変わらず唐突な友人の発言に、俺達は皆呆れたように顔を見合わせた。確かに、文化祭もテストも一段落して暇、その上秋なのにまだ蒸し暑い。それはそうだが、なぜ肝試し。俺達の心情はぴったりリンクしていた。
俺達4人は所謂イツメンで、暇さえあれば4人のうち誰かしらと一緒だ。小学校からの仲なので、それなりに何でも知っている。コイツの発言が唐突なのも、それに1人が困ったように笑うのも、興味なさげに呆れているのも、俺が思わずツッコむのも。全部、俺達のいつも通りだった。
*
「……で、ここが例の交差点?」
結局押し切られて肝試しをすることになり、訪れたのはとある交差点。小さな公園と団地のすぐそばにある、どこにでもありそうな交差点だ。
「そーそー。なんか、事故で亡くなった女の子の霊が出るんだって!5歳くらいで、赤いワンピース着てるって。」
いかにもな噂話だ。ひかし、ちらりと視界の端に、電柱の根元に手向けられた花束が映った。きっと、事故で誰かが亡くなったのは事実なのだろう。俺は一瞬だけ友人達から離れ、花束のある方へそっと手を合わせた。
噂では、ここで何か起きるのは事故が起こった時間、午前3時半らしい。事故が本当だとして、5歳かそこらの女児が、午前3時に出歩いていたのならそっちの方が怖い気がする。
どうでもいい話をして眠気と戦いつつ、遂にやってきた3時半。俺達は噂通り、交差点のカーブミラーを覗き込んだ。
全員絶句した。確かに、赤いワンピースの女の子はいた。いたのだが、そんなことはもう些細なことに感じられた。カーブミラーに映っていたのは、古めかしい街並みだった。茅葺き屋根の家に、舗装もされていない道、鏡の中を行き交う人々の服装は着物で、刀を佩いている人もいる。当然、今俺達がいる場所は再開発が進んだ地域なのでそんなものは無いはずだ。こんな時間に人通りがあるはずもない。鏡の中の人々の視線が、皆揃って俺達の方に向いた。
恐ろしくなった俺達は、その場から逃げ出した。こんな肝試しを提案しやがったアイツも、大人びたヤツも、普段気怠げなのも、この時ばかりは本気で走った。もちろん、俺も。
しかし、誰かに袖を引かれて立ち止まる。俺が急に止まったので、3人も怖がりながら足を止めてくれた。
『あぶないよ。』
可愛らしい女の子の声が聞こえた直後、目の前の道、丁字路から猛スピードで車が突っ込んできた。ここで止まっていなければ全員即死だっただろう。
そんな出来事に怯えた俺達に更に追い討ちをかけるように、恐ろしい事実が露見していく。車の運転席には、誰も居なかった。
俺達は速攻逃げ帰り、週末にお祓いに行った。あの交差点には近づきたくもなかったが、俺達を助けてくれたあの子へのお参りだけしに行った。
それ以来、あの過去と繋がったような恐ろしく未知の出来事が多すぎる交差点には近付いていない。

テーマ:未知の交差点

10/12/2025, 6:15:52 AM