真空

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涙の理由

ポタポタと眼から雫がこぼれ落ちる
拭いもせずに一心不乱に手を動かしている
「危ないよ」
ろくに前も見えていないくせに包丁を持つなよ
なんて言えたらいいのだけれど
「平気だ」
相手は聞く耳を持たずに次の玉ねぎを手に取る
これで3つ目
何に使うんだよこのみじん切りの山
まったくさぁ
「泣きたいなら肩くらいは貸すけど?」
「泣いてない」
「いや、無理がある」
「これは玉ねぎのせいだ」
自然現象だからなんて言い訳しながらも
手際よく玉ねぎを刻んでいく
この意地っ張りめ
そんなものに頼らないと泣けないなんて
おかげで手元が心配で目が離せないじゃないか


【ハンバーグ、カレー、ミートソース】

9/27/2025, 3:24:51 PM