誰かの居場所に

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夢と現実というのはひとつの境界線で区切られている。果たして、夢か現実かどちらにいるのか。本人には分かるわけあるまい。

「はやくはやく!!もうお母さん行っちゃうよ!」

「わかってるって」

妹のあまりの急ぎようにまるで妹を操ってるプレイヤーのように感じる。
カゴいっぱいに入った林檎は赤く熟れ、芳醇な香りを漂わせてくる。

「おい!絶対落とすなよ!!」

僕が声をかけると、わかってると言わんばかりの、笑顔で振り向く。

ここでの林檎は本当に貴重なのだから。
約3年前、世界は地球温暖化の影響で一気に砂漠化してしまった。食べ物も、生き物もろくに育たず、今や水1本で1万弱するのだ。

生きるだけで地獄を見る世界。それでも僕らはまだ、幸せな方なのだ。
奇跡的に叔父の家で、久々になった林檎を貰うことが出来た。

5つ貰って、2つは病院にいる母に持っていけど言われたので渋々了解し、今運んでいるのだ。

妹にはいってないが、母の病はもう治らない。
骨と皮だけになっただけの人間を置いておけるほど病院には余裕が無い。
だから、連れていかれるのだ。
遠いどこかに。母はこの国にとってのお荷物なのだから。

「兄ちゃん!!もうちょっとだよ!」

「あぁ、そうだな」

「兄ちゃん、うちね夢があるの。いつか、お医者さんになるの。お母さんを治そうとしてくれたお医者さんみたいになるの!」


「そうか、」

呑気なもんだ。何が医者だ、只々母を見捨てた癖に。

「兄ちゃんは?どんな夢?」

「あぁ、そうだなぁ、、、」

僕の夢、、、一体なんだろうか、そんなことを考えているうちに妹の声が聞こえてくる。

「見えた!!お母さんの乗る車だ!!」

「ほんとだな、」

母以外にも捨てられる人がいるのだろう。そこには大量の車があった。
これでは到底母を見つけるのは不可能だ、仕方ない、

「すみません、今日出発予定の須田の子供です。母に渡したいものがあって、」

迷惑そうに向けられた目にビビりながらも何とか妹を呼び止め、カゴを渡す。

「確かに受け取りました。どうも」

「はい、ありがとうございます。ほら、お前も」

「あ、ありがとうございます」

「さて帰るぞ、」

「お母さんは?お母さんには会えないの?」

「ああ、会えないよ、まぁでもきっといつか会えるさ」

「そっか、本当はうちの夢伝えたかったな」

「、、、伝えなくてもきっとわかってくれるさ。林檎は栄養満点なんだ、病人にとっては薬のようなもの、お前は、お母さんにとっての医者だよ。」

「ほんとに?!やったー!!!」

「良かったな」

「うん!あとは兄ちゃんの夢叶えるだけだね!!」

「ん?ぼくは今もう叶ったよ。僕の夢は、お前の笑顔を見ることだからな」



ピコンピコン

TRUEEND



「くっそーまたトゥルーかー、なっかなかバットエンド来ないなぁ」

まぁそりゃそうか、何通りあるんだって話だよなぁ。次は、リンゴ落としてみるか、
さて、セーブデータ、セーブデータと、、、、、、、、、、、、、、
てか、途中お兄ちゃんプレイヤーみたいみたいなこと言ってたけど、メタイなぁ〜





果たして、彼らのいる場所は現実世界だったのか、夢の世界だったのか。プレイヤーと称した男は本当に現実世界の人間なのか、、、それは誰にも分からない。

ただひとつ言えるならば、夢と現実の境界線は浅いようで深く超えることは出来ないということ、、、

12/4/2024, 4:02:34 PM