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 童話や幸せな少女漫画のようにめでたしめでたしでおわる、そんな人生だったらよかったのに。
 ハッピーエンドを望んでしまうことは、そんなに我儘なことなのだろうか。
 ぬいぐるみを抱きしめて眠るように、ふわふわとした心地のままで終わる人生だっていいじゃないか。
 どうして、好きな気持ちはずっと一緒にいることを許してくれないのか、どうにもできなかった歯痒さに喉を掻き毟りたい衝動が湧く。
 乾ききった地面のようにカサカサとした感情。潤いを求めすぎて、求めすぎて、気がつけば飢え渇く人間に成っていた。
 お互いに恋愛感情は確かに成立していたのに……していたはずだったのに。

「恋愛はしたいけど、それだけだって伝えたのにわかってくれないんだね――ガッカリ」

「嫌だって何度も言ったよ? ねえ、その度にわかった、ごめんって言ってたのなんだったの? ちっとも理解してくれてなかったじゃん」

「やっぱりダメなんだよ。恋愛感情に粘膜接触が付随するヒトとは、一生わかりあえないんだから。じゃあ、誰かとオシアワセニね」

「鍵、返す」

 どうして、好きという感情だけで踏みとどまれる人間に生まれられなかったんだろう。
 そうだったら、そういう自分だったら、ずっとずっと最後のときまで大好きなひとと一緒にいられるハッピーエンドを迎えられたかもしれなかったのに。
「ごめん……ごめん、ごめん、ごめん……四年も付き合わせちゃって、ごめんなさい……好きになっちゃって、ごめん……」
 ぽつんと残った裸の鍵は冷たく銀色に光っていて、痛かった。

#ハッピーエンド

3/29/2023, 6:01:18 PM