「色って、なんですか?」
目が生まれたときから見えない少女の質問に、俺はしばし考える。
「………心が満たされるもの?」
なんだろう、この答えは。自分でもよくわからない。
けどきっとこんな答えでいいんだと思った。
「心がですか。じゃあ“赤色”だったら?」
「えーと、熱い」
「“緑色”」
「安らぐ?」
「“茶色”」
「俺にとってはココアの色だから美味しそうって思うかな」
「“水色”」
「冷たい。…そういえば水は透明なのに薄い青を水色っていうんだよな」
「“ピンク色”」
「かわいい」
「私はあなたからみて、何色の印象ですか?」
目の前の少女をじっと見る。
「桜色…かな」
「桜って花の? うすいピンクってことですか?」
「いや。なんか綺麗で切なくて儚くて、でも毎年会えて嬉しいって感じる色」
少女は綺麗に笑った。
「じゃあ、あなたが私にとっては桜色ですね」
終
*お題「カラフル」
5/1/2024, 2:07:57 PM