だから、一人でいたい。
何度も同じ時間を過ごしている。何度も何度も同じ任務をこなし、何度も何度も同じ壁にあたり、何度も何度もそれを乗り越え、何度も、何度も仲間を失ってきた。
始まりはいつだったのだろう。死んだときか、願ったときか。でも、必ず戻れば自分は若返り、周りの人間の確かに過ごしていた昨日が全て抜け落ちていた。当初は私は嬉しかった。はじめに助けられなかった親友をここからやり直せば助けられる。私は鍛錬を続けた。これから起こりうる未来を整理し、そのために備えた。
親友は助かった。代わりに、姉が死んだ。
今度は姉のために動いた。鍛錬を幾度も行い、身を粉にして働き、姉があんな無惨な死に方をしないようにと必死だった。起こりうる未来を待った。
姉も親友も助かった。代わりに、村が燃えた。
ああ、そうだ。何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も繰り返したって叶わなかった。解決の糸口を見つけられなかった。あいつらは容赦なく人を殺す。残酷で卑怯で憎い盗賊共のせいでいつもいつも奪われる。
今は、何度目だ。もう、覚えていない。目を覚ますと、そこには親友と姉が顔を覗き込んでいた。また、戻ってきた。ああ、また救えなかったのだ。いや、救ったところでこの円環とも言えるような時間の戻りに終わりはあるのだろうか。自然と涙が流れてくる。彼らにとっては突然泣き出した私が病んでいるように見えたのだろう。親身になって世話を焼いてくれた。話を聞いてくれた。
私は全てを話した。信用されなくても、この思いを誰かに話したかった。心を軽くしたかった。たとえお前は病でおかしくなったと蔑まれても、ただ、聞いてくれさえしてくれればよかった。
二人は笑わず、からかわず、真剣に聞いてくれた。嗚咽を漏らす私の背を撫で、何度も声を掛けてくれた。ああ、やはり、失いたくない。二人と共にもっと生きたい。
また、盗賊共がやってくる。だが今回は、私だけではない。私の話を聞いたあと、二人が村の人々に協力してくれるように頼んでくれたのだ。家を一つ一つ周り、拒否されても翌日に、また拒まれては次の日の出に。私は存外、恵まれていたことに気づけないでいたらしい。さあ、どこからでもかかってこい。
なぜ、どうして、どうしてこうなる。どうして負ける。どうしてころされる。どうして罪のない私達が死ななければならない。なにを、間違えた。戦略か。編成か。配置か。
私が、彼らに相談したことか。
そうなのかもしれない。何度やってもだめなのに、それを彼らに背負わせるべきではなかったのだ。少し考えれば分かることだ。なぜ、気づかなかった。なぜ無駄死にされた。なぜ、どうして、どうして私はこんな目にあわなきゃいけないんだ。だれか、たすけ…
また、もどった。二人が顔をのぞいている。ああ、また泣いてしまいそうだ。守りたい。たとえこの命に変えることになっても。
守るため。二人のため。この円環の先にある未来のため。
私一人のわがままだから一人でいたい。いなくてはいけない。強くならなくては。そしたらきっと私も救われるはずだから。
7/31/2023, 3:15:24 PM