シシー

Open App

 懐かしい夢をみた。

 まだ何も知らない無敵だった学生時代。いいことはなかったけど、何気ない日常が楽しかった。こんなことを言うと自分も歳をとったのだと、なんだか感慨深くなる。

 山のように出される課題とそれを元に容赦なく授業内容に差をつけたクラス分けが行われた。友達はみんな真面目な子たちで、成績もよく地頭もいいから突然の小テストでも満点ばかりだ。
対する私は勉強に集中できず、ただ授業を聞きながら外を眺めているような奴だった。頭はよくないが記憶力はよかったので得意な分野でだけは成績はよかった。
 まあ教師からはいい扱いをされず目の敵にされたが、そんなのはどうでもよくて、友達やクラスメイトと話しながら課題を進めた。
 途中、明らかにページの抜けた部分があって、また担当の教師が来てから話そうと思っていた。期限には余裕があるし1ページ程度ならすぐ終えられる。それがいけなかったなんて、今でも腑に落ちない。

 担当教師の授業が終わり、課題のページが足りなかったと冊子を見せながら報告した。嫌そうな顔でついてこいと言われ素直についていく。
 教師が手渡してきたのは分厚い紙の束だった。明らかに冊子よりも厚く、抜けたページを補うには過剰すぎる。
教師の顔をみた、酷く歪んだ笑顔で明日の提出を指示された。返事も禄にさせぬまま部屋を追い出された。
 いつもの嫌がらせだ、気にすることはない。
紙の束をめくってみてその厚さに納得した。思わず笑みがこぼれてしまう。下3分の1ほどを人通りの多いごみ箱に捨てた。誰かにみえるように表を向けてね。

 次の日、課題を提出しに行ったら中から怒鳴り声が聴こえた。気にせずノックをして入室許可を求める。
怒り心頭、といった教頭と隣のクラスの子が出てきて、私にも怒鳴りつけようとしたから先に課題の提出にきたと言ってやった。乱暴に取り上げられて、紙の束の中身を検分する。そしてまた顔を赤くして教師を怒鳴った。
 当たり前だ。だって渡された紙の束のほとんどは私が受講していない教科や授業範囲外の内容ばかりだったから。
その教師はしばらく経ったのち、辞めていった。
謝罪も何もなかったが胸がスッとした。私も悪いことをしたとは思うが、普段からあんな嫌がらせをされたら大人しくしている義理もない。



 捨てた紙束の中身、ね
 アレは特定の生徒の答案用紙をまとめたものだよ
 学年のトップがお飾りだったなんてね
 滑稽だこと




            【題:心だけ、逃避行】

7/11/2025, 10:22:28 PM