「1年、声小せえぞ!」
暑いグラウンドに飛ぶ怒号。怒鳴るように返事をする。いつもこんな調子だ。どれだけ頑張っても、決して認めちゃくれない。先輩たちだって、あんまり変わんないと思うけどな。人数も多いし、通る声の出し方を身に付けてるからそう見えるだけで、絶対に僕らの方が真面目に一生懸命やってる。来年になれば……
先輩たちが引退する日のことを指折り数えてる。我ながら酷い後輩だなと思う。ただまあ、そうやって人間は強くなってきたのだろう。理不尽に耐え、文句を言いながら上に上がる機会を虎視眈々と狙う。
後輩には優しくしよう。そう思いながら、僕は今日も声を出す。
『声が枯れるまで』
10/21/2022, 12:48:30 PM