ほろ

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彼女の目から大粒の涙が零れ落ちたことで、この実験は失敗したのだと悟った。

本来、『夜景の見えるレストランでのプロポーズ』に対し組まれているのは『嬉しそうにはにかんでOKを出す』というプログラムだ。今までの実験をクリアし、ようやく最終段階──『アンドロイドカノジョ』の1号機として世に出すための、最後の実験まで辿り着いたというのに。
「また作り直しか……」
溜め息混じりに呟く。
「いいえ、それは違います」
真正面から否定の言葉が飛んできて、僕は顔を上げた。大粒の涙を垂れ流したまま、彼女は微笑む。
「これは嬉し涙です。あなたが注いでくれた愛が、私のプログラムを変えたのです」
淡々と、しかし組み込まれたプログラム通りに彼女は泣きながらはにかんだ。
「ぜひ」
その2文字が、設定したはずの返答と違うことに気付くのは、わずか数秒後のことである。

12/13/2023, 3:01:18 PM