りんたろう

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誰よりも、ずっと前からここにいた。
誰よりも、ずっと前から君たちを見てきた。

鬼ごっこで、君がずっと鬼で、夜まで私のそばにいたことも。
学校の宿題で、大きな画用紙に、私の姿を一生懸命描いていたことも。
夏の暑い日、涼やかに通り抜ける風を求めて私の根元に座っていたことも。
台風の夜に、心配して、びしょぬれになりながら、私のもとへ駆けつけてくれたことも。

都会へ行った君が久々に帰ってきて、
可愛い彼女に、私のことを紹介してくれたことも。

その彼女が奥さんになって、
小さな君の息子を連れて、遊びに来てくれたことも。

君と、君の友達が、近くに大きなコンクリートの建物を建てた時、
まわりの人たちとケンカしてでも、私を切り倒さずに、守ってくれたことも。

足腰が弱って、私のところまで登ってくることがつらくなっても、
天気のいい日は、私と一緒に遠くの空を眺めるために、来てくれたことも。



君が来なくなって、しばらく経って、
君の息子の息子が、私を切り倒そうと言った。
コンクリートの建物を、大きく、新しくするそうだ。

私も以前のように大きな枝に、青々と葉を茂らせることもできない。
花を咲かせることもできない。

かつて私とともに過ごした他の木々たちも、
もう遠くに数えるほどしか残っていない。

私は幸せな樹だ。
ここに根を下ろして、君と、君の息子たちを見ることができて、
楽しい時を過ごすことができた。

私の後に、この地に根を下ろす木々たちも、
私のような幸せな風景を、君の子孫とともに築いてほしかった。

4/10/2023, 6:46:10 AM