#8 大地に寝転び雲が流れる・・・目を閉じると
浮かんできたのはどんなお話?
初夏の陽気を受け、草木生い茂る山の麓。
広がる草原に寝転び、流るる雲を友に。
束の間の休息と、紡ぐ物語-
「どうしようかしらねぇ、うーん、うーん…」
真っ黒なキャンパスを前に、うんうんと唸っているのは、神々に定められた序列の末端も末端、ようやく神格に迎え入れられたばかりの、分かりやすく言えば新人でした。
この新しき神に与えられたのは、創世の試練と権能の見定め。
できあがる創世記は、神にとって己を表す大事なもの。作り上げた世界を愛せるよう、材料は皆平等に用意されるので、発想や権能がものを言います。神なので制限時間はありませんが、しっくりくるアイデアが見つからず、新しき神は悩んでおりました。
人間で言えば、工房のような美術室のような。
そんな空間を気分転換も兼ねてウロウロし始めました。
「これが終わらないと仕事がもらえないのよね。でも、やっつけ仕事なんて絶対イヤ。きっと、これだ!って言うものが見つかるはず…」
さらなる天を見上げたり、自分の爪先を見下ろしたりしながら、孤独な存在に特徴的な誰に話しかけるでもない独り言をブツブツ呟きながら歩き回ります。
-ガッ!
お分かりですね。周囲への注意を怠った神は、絵の具入れを蹴飛ばしてしまいました。
「ああっ!やっちゃった!あー!しかもキャンパスにまで飛んだし!」
蹴飛ばされた衝撃で、色とりどりの絵の具は、大小ばらばらとキャンパスに飛び散っています。
それは、エネルギーに溢れた爆発のようにも見えました。
「あー…うん、まあ、これが私よね」
どうやら新しき神は無事に、
自身の権能と向き合い、
創世に本腰を入れることができそうです。
突如の衝撃から始まった創世は、
止まらぬ世界の広がりはそのままに、
少々の手心を加えることで行われた。
熱き太陽と廻る星の核が大地を温め、
吹き抜ける風によって更に匂い立つ。
木々や草花が歌い、動物たちは踊る。
それ即ち、創世の奇跡なり。
5/4/2023, 1:21:57 PM