もしも過去へと行けるなら
かの有名な博士は発明した。
夢の、タイムマシーンを。
『最新の情報です。
過去と未来を行き来できる夢のような機械
タイムマシーンの搭乗者増加に伴い
人口変動が問題視されています。
調査によると、主に情勢の違いや
発達した技術を用いての
犯罪行為などの理由から
現代における人口が減少しています。
これによりタイムマシーンが違法物となり
警察の特別隊がタイムマシーンの押収や
規制をかけています。』
博士、タイムマシーンは違法なんですって。
今すぐ作るのやめてください。
逮捕されちゃいますよ!
これが最後だ。
ときに、助手。
君はタイムマシーンに乗りたいと思うか。
思いませんよ!
今のニュース聞いてましたよね。
違法なんですよ。い、ほ、う。
ニュースの話ではなくて、君の欲求の話だ。
過去や未来に行って
何かをしたいと思うか。
え、まあ、そうですね。
小さい頃に戻れたらいいなとは
考えたことはあります。
なぜだ。
それは、昔の過ちとか正したいですし。
思い出補正とかあるじゃないですか。
そうだろうな。
私はそんな欲求を叶えるため
タイムマシーンを作っていた。
でも、ダメなんですよね。
思い出が過去に人を閉じ込めたりする。
今はそんな話ちらほら聞きます。
正しくは
思い出が閉じ込めてるのではなく
思い出に人が閉じこもっているに過ぎない。
なぜそんな話を?
この最後のタイムマシーンだが
今まで作っていたものとは違う。
だが、これは依頼されたものではない。
とっくに規制され
卸すところもないのだからな。
じゃあなぜ作るんですか。
リスクを冒してまで。
リスクを冒してまで
過去に行って過ちを正さねばいけないからだ。
それって。
今まで作ったものとの相違点だが
至ってシンプルだ。
これは過去に戻るだけの機能しか
備わっていない。
いわゆる一方通行だ。
博士、いけません。
このままでは私は捕まるだろう。
罪を背負い、償うのもやぶさかではない。
しかし、それでは釣り合いが取れないのだ。
今の国を壊した責任が私にはある。
行かないでください。
一緒に罪を背負いましょう。
君は最初からなんの関係もない。
無かったことにするんだ。
君は一般的な欲求を持った正常な人間だ。
私は欲求を過度に実現させてしまった異常者に
成り果ててしまったんだ。
いま君に、もしも過去へと行けるなら
どうしたいかと聞かれるならば
今の私は
過去の私とタイムマシーンを消したい。
そう答える。
では、私も行きます。
君のその優しさは買おう。
だがこれは一人乗りだ。
では。
7/24/2025, 11:05:37 AM