最後に顔を合わせたのはいつだっただろうか。
静かな夜。寝返りをうつ深夜。ため息でさえ大きく響く。雨も降らないと判断するほどの静寂だった。太陽が顔を出すまでにはしばらくかかる。上階であることと部屋の電気も消していることを理由にカーテンを開けている。
夜が明ける。大きな窓が部屋を明るく染め上げる。浅いまどろみに痛む頭を抑えて起き上がる。休日といえど、あまり遅く起きたくはない。あらかじめ考えていた予定を思い出しながら、ケトルに水を注ぐ。
今の時間、あなたが仕事をしていることを知っている。仕事中にスマートフォンを見ないことも。サイレントモードにしていて、通知音も鳴らないようにしていると言っていた。
だから、たった一言メッセージを送る。あなたが見ないことを分かっていて、わたしは紙飛行機に似たアイコンに指を乗せる。吹き出しとともに表示されたのは送信時間のみ。既読の文字はない。
ほっと息をつく。頭がふわふわしている自覚はある。そういうときに、同じことを繰り返している。自嘲するような笑みに声はない。明るい部屋にはそぐわない。
当たり障りのない、体調を気遣うメッセージも送る。その吹き出しが表示されたら、最初のメッセージを長押し。送信取消の項目を選択する。
ごめんね、誤字があったから送り直した。
最後にそう添えて。
会いたい、に既読がつくことはない。
9/20/2025, 11:53:40 AM