この先に価値あるものなんて何一つないのかもしれない。
錆びたフェンスを越えた先、廃れた工業地帯で、アーシャは立ち止まる。そこは工場の中だった。床には鉄くずが散乱していて、天井の割れたガラス窓からは冷たい日差しが差し込んでいる。
アーシャは錆びた銀色の棒のようなものが飛び出たリュックサックを下ろすと、瓦礫のなかの尖っていないところに座りこむ。
こんなところまで来たのは、滅びを待つだけのあの村に嫌気が差したからだ。周りの大人たちはみんな希望を持たせるようなことを言うが、ほんとは未来のことなんて何も考えていないんだとアーシャは知っている。だから自分がなにかやらないと、と思ったのだ。
リュックから棒を抜き取る。その棒には黒い針金のようなものが巻き付いていて、持ち手部分にはダイヤルやらボタンやらがついていた。
「アー、アー。誰かいる?」
アーシャはダイヤルを回し、ボタンを押しながらその機械に声をかける。
「おーい、誰か聞いてないの?だれか...」
数十分ダイヤルをいじったり、機械を叩いてみたりしていたが、ザーザーとノイズが走るだけで、返事はなかった。
アーシャは小さなため息をつくと、リュックを背負い、再び歩き始めた。
3/8/2026, 11:21:51 AM