もしも過去へと行けるなら。
貴方にもう一度会いたい。
「…ごめん、もう、期待してないから」
憧れの人にそう言われた日、私の中で何かが切れた。
どうして、どうしてそんなこと言うんですか。
ごめんなさい。私に悪いところがあるのならば直すから。だから置いていかないで。先に行かないで。
もう一度、私に期待して。
「…っ…」
同級生で、同じ部活で、でも、陰キャの私と陽キャの貴方は真反対で。
それでも、頑張ってきたけど、やっぱり怖くて。
もしも過去へと行けるなら、もう一度貴方との出会いをやり直したい。
ああ、惨めな承認欲求を満たしたいだけの、執着だ。
「…もしも、過去へと行けるなら」
「行きたいかい?」
…え?
思わず振り向くと、そこにはシルクハットを被った男性が、空を飛んでいた。
いやいやどういうこと。これは夢?幻?
「あの青春を取り戻したいんだろう?やり直したいんだろう?誰かに認められて、憧れと並べる自分になりたいんだろう?」
"なら、過去へ行けば良いじゃないか。"
そう言った男性は、にこりと微笑むと、私の前に降り立った。
都会のアパートの屋上で、夕日が沈んでいく中で、男性はひたすらに、私の言葉を待っている。
…本当に、行けるのだろうか。
この醜い心を曝け出してしまう前に、戻れるのなら。
きっと私は、今度こそ。
「…もしも過去へと行けるなら、」
私は。
7/25/2025, 7:22:50 AM