今日は幼馴染の結婚式だった。
満開の桜が青空に映える。
花嫁の化粧をほどこされた彼女は白いウエディングドレスがとてもとても似合っていた。
2つ歳上の幼馴染の彼女のことが、僕は幼い頃からとても好きだった。
本当の姉と弟みたいだと互いの家族は笑い、僕たちも笑いあった。
そう、姉のように憧れているだけだと思っていた。
桜の花びらが舞う。
白いウエディングドレスの彼女が隣の男を見上げて微笑んだ。
彼女の美しさを目に焼き付けたいのに、霞んで見えなくなる。
僕は涙を零さないように、満開の桜を見上げて鼻を啜った。
その後の披露宴のことは、正直憶えていない。
僕が式場を後にすると、彼女がひとりで追いかけてきた。
「今日は来てくれてありがとう」
「ん。おめでとう」
二人の間に沈黙が流れるのを僕は笑って遮った。
「ドレス、良く似合ってる」
「え、あ、ほんと?たくさん試着して決めたんだよ」
「うん」
彼女は嬉しそうに笑った。
今度こそ目に焼き付けようと思ったのに、ダメだった。
涙ぐんでしまって、僕は咄嗟に彼女から目を逸らした。
彼女の旦那さんが、彼女を探しているのが見えた。
「じゃあ、行くから」
「うん」
「お幸せに」
好きだよ、とは言えなかった。
ずっと好きだったんだよ、と言えなかった。
姉のような憧れじゃない、愛してるって、早く気づけば良かった。
そしたら、僕と君は両想いで、君のウエディングドレス選びを僕は見守っていたのかな。
桜が舞い散る。
僕の頬が涙に濡れる。
何か違和感を感じて拭ったら、桜の花びらが一枚指に張り付いた。
今日の彼女の頬のような、桜色。
幸せな結婚式に降り注いだ満開の桜の花びらのうちの一枚。
彼女を忘れられない僕の名残りのような、ひとひらの桜。
僕は大きく息を吐き、手のひらにそっと隠した。
ひとひら
4/14/2025, 3:10:03 PM