わをん

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『街の明かり』

田舎から都会へと向かう夜行バスの車内の灯りが落とされる。消灯時間を迎えたバスには寝息とエンジン音だけが響き渡っているけれど、集合時間ギリギリで乗り込んだせいか眠気がなかなか訪れなかった。
閉め切られたカーテンをチラと開けるとすでに高速道路へと合流しているバスからの景色は生活の灯りや寂れた農道を照らす街灯、昼夜を問わず稼働している工場のライトなどが暗闇のあちらこちらに点っていた。ぼんやりとしながら流れていく街の明かりを見るともなく見ていると時々ギアの切り替わる音や高速道路の段差を越えるときの振動などが妙に心地よくなって次第に眠気が訪れてくる。
カーテンの音が鳴らないように注意深く閉めて座席で二度三度と身じろぎをして目を閉じる。まぶたの裏に先程見た明かりがひとつふたつと思い浮かんだあとには意識を自然に手放していった。

7/9/2024, 3:44:20 AM