yuzu

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ふと、目を覚ます。
真っ白い天井を見上げる。
窓から差してくるやわらかい朝日。
ぴん、と張った新鮮な空気がおいしい。うーんと背伸びをして状態を起こす。
「おはよう、」呟いてみるけれど隣に横たわっている彼は気持ちよさそうに目を閉じている。おそらく暫くは夢の中だろう。
全く。「明日は俺が先に起きて朝ごはん作るから期待しておいて」なんてほざいてた癖に。
はあ、とため息を着くけれどそこには怒りの感情は無かった。むしろその姿でさえ愛くるしい。
彼は寝ているだけなのに。私の感情をこんなにも揺さぶってくる。
何となく自分のスマホを触ると何故かカメラモードが作動していた。
ふと、子供の頃のように悪戯心が芽生えてくる。
1回ぐらいいいよね、寝ているあなたが悪いのだから。
私はピントを調整し、シャッターボタンを押す。
ぱしゃり、と控えめな音を立てて写真が保存される。
画面には彼の寝顔が表示される。
撮っちゃった、少し罪悪感が芽生えるけれど、愛くるしい寝顔が保存されたことに心が少しだけドキッと動かされる。絶対に内緒にしよう。彼は寝顔を取られて喜ぶような趣味は持たない。後にこの画像はおそらく私だけの宝物になるだろう。その事実が誇らしかった。
私はスマホをポケットにしまい、彼の横に寝転ぶ。
ゆっくりと息を吸い、目を閉じてみる。
これは彼の目が覚めるまでの出来事で、私だけが知っている。その事実を確かめるようにめいいっぱい息を吸い込んだ。

8/3/2023, 2:40:09 PM