私にとってこの世は、無色の世界だった。別に、本当に色が無かったわけじゃない。
朝起きて、ご飯を食べて、学校に行って、帰って来る。そしてまたご飯を食べて寝る。そんな、変わり映えのない生活。色を感じたところで面白くもない世界。
それが変わったのは、彼女との出会いだった。
小説なんかでよくあるような、破天荒な人柄ではない。むしろ逆で。慎重で几帳面で、人をこう言うのはアレだが生きるのが下手な人間。でも私には、そんな彼女が誰よりも輝いて映った。
勉強が出来ないなら死に物狂いで勉強して学年トップの成績を掻っ攫ってきて、運動が出来ないなら毎日早朝ランニングなんて始めて、可愛くない自分が嫌いだとメイクを極めて自分のモノにした。
誰よりも自分を嫌っていて、誰よりも自分が大好きな人間。それが彼女だった。
それを高校時代3年間隣で見てきた私は、社会人になった今…また山も谷も無い道を歩くことに甘んじようとしている。
…そんなこと、耐えられるわけが無い。再び無色の世界に戻るなんて真っ平御免だ。
それに、彼女にまた負けてしまうのは、彼女と出会ったせいでプライド高くなってしまった自分が許さない。
負けず嫌いの彼女は、よく私と勝負をしたがった。最初は何もかも私の圧勝、もはや何故負け試合を挑んできたのだろうとさえ思ったこともあったが…驚くべきことに、彼女はもう一度同じ勝負を挑むと、次は私に完勝してきたのだ。
そうして私たちは勝負し続けてきた。そして高校を卒業する時、最後の勝負を始めたのだ。
「どちらがより幸せになれるか」
負けられない。最後くらい、彼女に勝ったまま逃げ切ってしまいたい。
さあ、何を始めようか。勉強をして資格でも取ろうか?ジムにでも行って新たな自分になろうか?それとも人脈を広げてみようか?
もはや無色の世界などではないこの視界は、眩く輝く明日を映している。彼女も、きっと同じような景色を見ているのだろう。
さあ、共に行こう。隣には居なくとも、同じ方向を向いて歩いて行けるのなら、いつかはその道が交わることをあるだろう。その日を待って、また出会った時には「どちらがより幸せになれたか」で勝負をしよう。
これは、彼女と出会って、別れて、また出会うための私の世界の物語なのだから。
4/18/2026, 3:18:53 PM