ほたる

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海を見た。

どこまでも続く水平線を見て、安直に死にたいと思った。
もしかしたら、一番幸せに世界に終止符を打てる方法かもしれない。こんなにも綺麗な青を焼き付けながら、溺れるのだから。

そんなわけがない、私は水が苦手だ。足のつかなくなった海水の上で、ただ惨めに格好悪く死んでいくのだろう。そんな死に方が、自分には似合うような気がしてしまった。

息が、苦しい
昨日のことを思い出すと、のたうち回りそうになる。なにかの禁断症状でも出たみたいに、ずっともがいている。
自分のことをなんで情けないのだろうと思った。
大切な人にそんなことを言わせるような人間であること。
あなたを孤独の頂点から引き摺り下ろせなかったこと。
じゃあそれができたとして、私にその責任などは取れないということ。
今まで光だと信じてきたものは全くそうではなく、
寧ろ毒であることを目の当たりにしたこと。
全てわかっていたのに、全てわかっていなかった。

世界は、どうしようもない、信じられないくらい不出来な物語である。
起承転結などは無視されて、ただ絶望と悲しみだけにスポットを当てられ、そこにだからこそこうだああだという美学すら、ない。
ただひたすらに、苦しく、苦しいだけのものだと、私は昨夜思い知ったのである。

何が悲しいのかというと、これはただの失恋だということだ。
そして私はそれをこの歳になるまで知らなかったことだ。
世の中にはとっくに絶望しきったと思っていた。しかしまだこんな気持ちが残っていたのかと、唖然とする。
私の世界はこれ以上黒く青く染まるというのか、ふざけるな。
あなたを失いたくないという足掻きは、私にとってとても大きな希望であった。同時に、絶望でもあった。

解決策などはとても見当たらなかった。
昨日あなたと見た海を思い出した。
あの時死んでおけばよかったと思った。
そんなことを思うような自分だから、私はこうなのだ。

あの時、死んでおけばよかった。

8/23/2025, 4:48:07 AM