昼行灯

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便所掃除をしてるおばちゃんに聞いてみた。

ロックンロールって、知ってるかい?

おばちゃんは、困ったように首を傾け、言った。
「でも、アンタは優しそうな顔してるね」
おばちゃんは続けた。
「ダンナは早くに死んだ。アタシゃ、一人息子を大学にやるため……そのために、ここの汚ない便所を綺麗にしてるんだよ」
返事に困ったので黙っていると、おばちゃんはさらに、ひとりごちた。
「こないだなんかね。便器の周りいっぱいにウンコ! おまけに、クソまみれのパンツも捨てられてたさ」
「ホントに、酷い話だよ。恥ずかしくないのかね? 」
「だけどアンタ。人として、こんな事が許されるかい? きっと、すごくマトモな生活をして、他の誰からもマトモな人間として受け入れられて暮らしてんだよ! 」
深いため息を吐いてから、おばちゃんは言った。
「便所掃除をしてるアタシより、まともな人がさ! 」

ロックンロールって、知ってるかい?
--おばちゃんに聞く前に、彼女は次の便所掃除に向かった。

おばちゃん。
せめて
ありがとう、さようなら。くらいは言いたかった。

それを言う前に彼女は、
言いたい事だけ言って、
自分の仕事を遂行した。

--皆さん、

ロックンロールって、知ってるかい?


8/20/2023, 10:56:03 AM