たも

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テーマ「特別な存在」

また、雨だ。休みの日に、たまに外出しようとすると雨が降る。学校は皆勤だけど、友達がいなくて休日はほぼ引きこもり。ちょっと外に出ようと思った時に限って雨が降るのは、俺が超ド級の雨男だからだ。

お前は雨男だな、と父親によくいじられてきた。本当に俺と出かけると雨が降るから、言われて当然。どこでも雨を降らしてしまうのが、始めは恥ずかしかったが、いつしか自分が「雨の神」になったようで誇らしかった。

学校で、一度も雨男といじられたことがない。俺のクラスは、体育の時によく雨が降る。遠足の日にも雨を降らした。下校で外に出るときも、俺が外に出たら降ってくる。だけど、俺は一度たりとも雨男といじられたことがない。俺の担任は、毎年雨男雨女といじられる。他の奴が雨男呼ばわりされていたこともある。雨男は俺なのに。
いじられるキャラじゃない、ってやつなのか。雨を降らすのは、俺の能力なのに。


9月、ヒナタという男が転校してきた。ヒナタは陽キャも陰キャも別け隔てなく絡んでくる、太陽みたいな男だった。無キャの俺にも絡んでくる。
「お前さ、髪ボサボサじゃん。てか、隠れイケメンじゃね?ちゃんと整えろよ。」
「…そうするわ。」
ヒナタのお陰で、ちょっと他のクラスメイトと喋ることも増えた。俺がぼそぼそ言ってたら、「実はお前、面白いこと言ってるよな。もっとデカい声で言えよ。」って。拾ってくれた。

ヒナタは俺にとって、特別な存在だ。ああ、ヒナタに「雨男」っていじられたい。ヒナタにいじられたら、俺は最強の雨男キャラになって、クラスの厄介者という名の人気者になれる。事あるごとに話題の中心に…!
でも。



ヒナタが来てから、全然雨が降らないんだな、これが。

3/24/2024, 3:24:19 AM