一つだけ
鉛筆画をぐちゃぐちゃに握りつぶして、ゴミ箱に投げたが入らなかった。拭った汗は黒く、生温かかった。満足いく風刺画が描けず、一か月が経過していた。
アトリエには湿度を含んだ隙間風が絶えず吹き込んでくる。
ゆっくりと伸びをした後に席を立ち、腰を回すとバキバキと音が鳴った。持っている中でいちばん上等な服に着替えて、近所の文房具屋に向かう。
足取りが重い。
石畳に躓いた。
文房具屋はあまり繁盛している様子ではなかったが、店主の気立てがよく、固定客がよく出入りしているよつだった。
絵画のことを愚痴ると、「まだまだ若いんだから」と、店主に励まされる。同情に似た感情が辛かった。絵を何枚か手渡し、無言でその場を離れた。
また描いた。上手くはいかない。書くのをやめた。ストレスでおかしくなりそうだった。暗く狭い、ただの部屋の中で閉じこもり、鉛筆だけが無駄に短くなっていく。
何かが違う。何が違う?何かが違う。
満足できない。多分一生そうなんだろう。
未来で庭に咲き誇る鮮やかな睡蓮を思い描きながら、目の前の真っ白なキャンバスに向かう。
4/3/2026, 11:29:21 AM