『別れ際に』
「またね。」
そう残して、私の前から遠ざかっていく彼。
「待って!」
「どうしたの?忘れ物あった?それならごめん。」
「違う。」
そこで止まってしまった私を抱きしめてくれる彼。
「寂しくなっちゃった?」
「............。」
「何も言わずに俺がいなくなることはないから。」
「そうかもしれないけど、。」
「それでも心配?」
「そういうことじゃなくて....。」
「じゃあ、なに?」
明らかに分かっているのに聞いてくる彼。
「帰ってほしくないの...?」
「まだ、居てよ。」
「よくできました。」
そう言って私の頭を撫でてくる彼。
「そう言ってくれるの待ってた。俺も帰りたくなかったし。」
「大好き。」
「俺は愛してる。」
漫画のような会話をしたあの日。
あれからもう3年か。
何も言わずにいなくならないと言った彼は、
私の前からあっさりと姿を消した。
「私も愛してたよ。また来るね。」
そう言って、私は彼に背を向けて歩きだした。
9/28/2024, 1:47:07 PM