Ino.

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2025/6/12

お題:雨音に包まれて

 雨音に包まれて、私は一人歩く。道端では雨の雫を受け、紫陽花の花が咲いていた。

 いつもなら隣にいるはずの“君”は、今日はいない。
 私と君との関係は――少なくともこの学校にいる間は――変わらないと信じていた。
 そんな考えも、今となってはなんだか胡散臭い。
 きっかけは一つ。且つとてもシンプルなものだ。
 “クラス替えでクラスが離れた”あぁ。何て単純なのだろう。
 最初はよかった。お互いクラス替えの結果を悔やみながらも、仕方のないことなのだから。と、この関係を続けられるよう努力することを決めた。
 しかし、一緒にいる時間が減ったことによる影響は、思っていた以上に大きかった。

 私と君との関係は元々、帰り道から始まった。
 中一の今頃、部活に入らず一人で帰っていた私を、同じく帰宅部だった君は「一緒に帰ろう」と誘ってくれたのだ。
 小学校の頃から一人で帰るのが常だった私にとって、その言葉は君が思う以上に強力なものだった。
 話をするのが下手な私は、私なんかと帰って君は退屈ではないのだろうかと何度も考えたが、その後も君は私と一緒に帰ることを選んでくれた。

 ――なのに今日、君はいない。
 勿論、今までにもお互い用事などで一緒に帰れない日はあった。
 だけど、今日君から送られてきたのは、「今日は一緒に帰れない」の一文だけ。なんだか、そっけないのだ。

 雨音の中を、少し早歩きで帰路につく。――一人で帰る道というのは、こんなにも退屈なものだったのだろうか。心做しか、家までの道が遠く感じる。

 君は人気者だ。私と違って友達だって多いし、私の知らない一面を見せているのを見て、嫉妬を抱いたことだって何回もある。

 私は君が好きだ。だけど君にとって私は、ただの複数いる中の一人でしかないのかもしれない。クラスの違いごときで崩れてしまう、脆弱な関係でしかないのかもしれない。

「嫌だよ。そんなの……。」

 私の呟きは、雨音の中でかき消されてしまった。

6/12/2025, 7:09:08 AM