屋上の扉を開けると花曇りの空が広がっている。
そこにぽつんと一人の生徒が立っていた。
彼女は目をつむり雨の中傘もささず上を見上げていた。それが何故か妙に美しくて哀しかった。
「……ねぇ、風邪引いちゃうよ?」
まるでいつの間にか消えてしまいそうな彼女にぼくは思わず声をかけた。
すると彼女ははっと目を見ひらいた。
「……大丈夫、です。」
明らかに拒絶された。でもなぜかほうっておいてはだめだと僕の脳内が警告する。
「ぼくもそこにいってもいい?」
思わず繋ぎ止めたくて、意味がわからない言葉が出た。彼女もキョトンとしている。
「なんで?」
「……雨…雨がやまないから?」
疑問形になってしまった。あまり話したことがないのにこんなことを言われてきっと戸惑うだろう。ぼくも戸惑っている。どうしたらいいんだろう、この空気。
「……っふっ…ふふ」
絶妙な空気を破ったのは彼女からだった。
思わずと言った笑い声にぼくは目を見開いた。
「なんで、急に…っふふ。あーおかしいな」
笑っている彼女の目から一つの雫が落ちた。
「誰も来なくて、独りぼっちみたいだなっておもったんだねど、君がきてくれるとは思わなかった。ふふ、ありがとう」
涙を流しながら晴れやかに笑う彼女の上には、淡い虹が架かっていて、綺麗で、ぼくは見惚れてしまった。
「君の名前をぼくに教えてくれませんか?」
一目惚れをした青年の物語が今、始まった。
#雫
4/21/2024, 11:27:16 PM