「死にたいな〜。」
彼はそう言いながら、私の髪を撫でていた。
【俺が死んだら、すぐに忘れてくれて良いよ。】
夜中に送られていた一通のメール。私がそのメールを見たのは、夜が明けてすぐの頃だった。私はメールを閉じ、出かける準備を始めた。
前から彼の死にたがりは知っていた。病弱で難儀な生活を送ってきたからこその、思いだとも理解していた。しかし、私は彼と生きる事を諦めきれなかった。だから、無知なフリをしてきた。本当に、馬鹿だよ。君も私も。
コートを着たら、さぁ出発だ。目的地は、彼が以前買っていた墓のある墓地だ。私が自宅を出た頃には、ぼちぼち店開きが始まっていた。私は、少し花屋に寄った。
「いらっしゃいませ。どのような花をお探しですか?」
店に入ると、元気の良い声が通った。私は、定員さんに一つの花束を頼んだ。定員さんは不思議そうに、花束を包んでくれた。
彼の墓に着く頃には、すっかり日常が灯っていた。
「まさか、本当に死んじゃうんなんてね。」
返事はない。もしかしたら、彼はまだ、ここに来ていないのかもしれない。
「あのメールさ、何なの?忘れても良いなんて、君が言うなよ。」
気づいた時には、私は泣いていた。
「この花が散るまでは、覚えてやるよ。」
私はそう言い、先程買った花束、造花の花束を乱暴に置いた。
煙草を蒸す。今までは彼のために禁煙していたのに、もう禁止する理由はない。
「造花の花言葉、君は知ってるのかな。」
まぁ、良いか。何が何でも、この永遠の花束は君ので間違いないのだから。
2/4/2025, 2:51:57 PM