かたいなか

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「距離イコール、時間かける速さ。つまりバチクソひねくれた考え方をすれば、今回のお題って、『時間と速度』に読み替えられたりする……か?」
まぁ、ぶっちゃけ時間にせよ距離にせよ、何をどう書きゃいいんだよってハナシには、なるけどな。
某所在住物書きは今日も今日とて、相変わらず。
上を見て、ため息を吐き、途方に暮れている。

距離をどうするのだ。距離を計算するのか、稼ぐのか、短縮それとも偽装するのか。
「時間に関するお題は、結構大量に見た気がする」
物書きはつぶやく。
「距離な……」
昔々「1万光年は時間じゃない。距離だ」というネタを見た。どれほどの距離になるのだろう?

――――――

前回からの続き物。完全にフィクションでファンタジーな、厨二要素満載のおはなし。
前回のお題回収役であった犠・牲・者サン、もといギ・S・シャサンは、膨大な富と不思議なアイテムを所蔵する某管理局に忍び込み、
ガッツリ潜入がバレて、仲間ともども、己の魂を美味しいミカンに変えられてしまった。

なんで?? そんなコタツが管理局にあるのだ。
ナンデ?? 細かいことは気にしてはいけない。

そのまま皮をむかれて、コタツの中で、美味しい美味しい「いよかん」として、食われておしまいかと思われた、あわれな犠牲者サンのシャサン。
意識が戻り、目を覚ますと、彼はどこかの神社の拝殿の中に居て、両手両足を縛られていた。
「両手両足」だ。シャサンは安堵した。
人間に戻れたのだ。ああ、助かった……

「『助かった』? どうだろうねぇ?」
途端、目の前の巫女姿がニヤリ、にやり。
銀色の狐耳と狐尻尾はピコピコ、ゆらゆら。
「化け狐」。シャサンの脳裏に3文字が浮かんだ。

「あんたをミカンにした若い子ちゃんが、
何故あんたが管理局に忍び込めたか、あんたのアジトがどこに在るのか、聞き忘れたらしくてね」
したり、したり。ぱたり、ぺたり。
化け狐の女はイタズラな笑顔で距離を詰めてくる。
「私は、元世界線管理局員、先代の『キツツキ』」
人差し指と中指で、シャサンの胸を――心臓のあたりを、コン、コン。 まさしくキツツキが樹木にそうするように、突いてくる。
「尋問……査問官をしていたのさ。こうやって」
コン。化け狐の中指がシャサンを強く叩くと、
ああ、 指が、手が、 シャサンの中に、
シャサンの、記憶と魂の奥底に。

――…「『法務部情報管理課キツツキ前査問官』。
管理局に『黒穴』のノウハウを提供した張本人。
経理部の先代『スフィンクス』、つまり今の『ノラ』査問補佐官と実質上のタッグを組んだ方だ」
同時刻。場面は変わり、拝殿近くの小さな座敷。
シャサンに忍び込まれた管理局の従業員2名が、上記「化け狐」について、情報を共有している。
ギャーギャー悲痛な、あわれな犠牲者の大声がわずらわしいものの、仕方無い。気にしてはならぬ。

「元々、俺達が現在専売特許として使っている『黒穴』、世界と世界の間の距離をほぼほぼゼロにできる術は、『ここ』の世界に存在していたんだ」
火の付いていないタバコを噛みながら、2名のうちの片方、ルリビタキが言った。
「『稲荷神術:狐の巣穴』。魔法より科学に舵を切ったこの世界では、ほぼほぼ失われた秘術だ。
それを、ここの稲荷神社の狐が、俺達管理局に」

「私達の管轄外の『黒穴』がこの世界にあるのも、そもそも元々『黒穴』の原型が、この世界のものであったから、ということですか」
「イタズラギツネの大イチョウ」も、これで説明が付くわけだ。 ルリビタキの情報に、2名のうちのもう片方、ツバメが納得して数度頷く。
イタズラギツネの大イチョウとは?
詳細は前々回投稿分参照である。
スワイプが面倒なので、気にしない、気にしない。

「まさか、彼女の孫狐が最近、ウチの局のセキュリティをすり抜けて遊びに来るのも?」
「いや。それは完全に、ウチの受付連中の手引だ。
ただ、あの末っ子子狐、『ばあちゃん』のチカラを『父親』以上に引き継いでるらしくてな。
『母親』の霊力がカンフル剤になったんだろうさ」
「『距離』のチカラを?」
「『距離』以外にも。おそらく他の概念も」

「やー、久しぶりに管理局時代を思い出したよ!」
こんこん、コン。2名の会話に、狐耳と狐尻尾の巫女姿が、上機嫌で割り込んできた。
手には赤と白で編まれた少々太めの1本縄。
その縄は成人男性ひとりをぐるぐる巻きにしており、それはすなわち虚ろな目を晒して気絶している犠牲者サン、もといシャサンであった。
「懐かしいねぇ。百何年ぶりにヤンチャしたね」

ほら。コレが欲しいんだろう。
化け狐がルリビタキに差し出したのは、1枚の紙切れ。シャサンから抜いた情報のメモである。
「なるほど」
ルリビタキは軽く礼をして、すぐさまツバメの背中をたたき、退室をうながした。
「管理局にとんぼ返りだ」
ルリビタキが言った。
「先月11月2日あたりの、例の『永遠』の一件が、酷いところに飛び火した。
局の収蔵品が――とびきりヤバいのが狙われてる」

12/2/2024, 4:30:48 AM