目は口ほどに物を言う。
だから、見つめられると困るんだ。
別に私は今の関係に不満などないし。変えたいとも思わないから。
どんなにアピールされて、こちらを見てほしいと言われても恋情なんて感情は私には難しいものだと思うから。
答えるつもりは今にも後にも無かった。
でも、君の隣はやけに居心地が良かったから甘えてしまったのかもしれない。
自分は君の想いには答えずに、上手く、友情だけを築けるというどこから湧いたかはわからない自信があったことも認めよう。
実際、君の目すら見なければ上手くいったと思う。
なんなら、これまで通り軽く吐く、愛の言葉をいなして揶揄うことだってできたと思うんだ。
けれど、見つめられるとなると話は変わってしまった。
純粋で無垢な愛情だけをふんだんに含んだそんな瞳で見つめられてしまったら、なんだか嫌でも惹き込まれてしまった。
認めるのなら、落ちてしまったのだ。
悔しいことに、彼の思惑通りに。
どうやら恋とかいうものは、本当に自分の意思など関係なく落ちてしまうものらしい。
なんとも負けたようで、悔しいものだ。
そう、悔しい。
悔しいんだ。
これは悔しさでしかないのだ。
胸が異常なペースで高鳴るのも、悔しくて興奮してやまないからだと彼女は誰かに言い訳するように、紅く染まる頬を手で抑えながらそう、独りごつ。
その表情はまるで、初心な少女のようでもあるのだった。
―――落とされる
お題【見つめられると】
3/28/2024, 3:51:07 PM