ほろ

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勇者が死にました。

魔王戦終盤。時が止まり、周りの仲間も敵もみんな動かなくなったそこに、青白い光。テロップのようなそれを見上げて、また失敗したと思う。
これで何度目だろう。レベルが足りずに負け、HPを回復し忘れて負け、仲間の蘇生を忘れて負け、負け、負け……その度に、はじまりからやり直す。

「今回もダメかぁ」

時が止まっている間は、何故か自分だけ動ける。それがどうやら、この世界の仕様らしい。だから、また一からやり直すために呪文を唱える。すると、魔王も仲間も敵も、みんな一気に光に包まれて消えて、自分ははじまりの村から三つ分ほど進んだ街へ戻される。
時は動き出し、全ての経験値がゼロの状態から、再び物語が始まるのだ。
また、勇者がこの街へ来るのを待たねばならないのだ。

「バッドエンドでも良いから進んでくれりゃあ良いのに」

勇者が死んだって、他の奴らが生きてたら魔王くらい倒せるだろう。どうしても「全員生きててハッピーエンド」に向かいたいこの世界と、自分は相性が悪いのである。

3/29/2024, 2:37:51 PM