コポコポと熱湯をティーポッドに注ぐ。紅茶の鮮やかな色と香りがじんわりと濃くなっていく。
後は蓋をして蒸らせば美味しい紅茶ができるとかなんとか。
正直うろ覚え知識だから合ってるのかすらわからない。紅茶好きな人には悪いけど、そもそも紅茶にそこまで詳しくなりたいとは思ってない。紅茶も特に好物でもないからね。
そんな僕がなぜこんなことをしているのかというと、ひとえに彼女のため。
彼女が昔からハマっている刑事ドラマ。それに出てくる特命係の警部さんが紅茶好きらしい。
先日、作中に出てくるティーセットを彼女が購入し、あなたの淹れた紅茶が飲みたいなとお願いされて今に至る。
……よし、そろそろいいだろう。注ぐ時は徐々に高くっと……
正直、こんな位置から淹れるのは間違っているんじゃないかなと思うけど彼女がそう淹れてほしい、と頼み込んできたからきっと正しい方法なんだろう。たぶん。
……でもかなり飛び散っちゃった。これ本当に合ってるのかなあ……?
そう首を捻っていると彼女が嬉しそうに駆け寄ってきて一口飲み、満面の笑みを浮かべる。
……まあ、こんなに喜んでくれるのならこれでいっか。
ふわりと漂う紅茶の良い香りと相まって今日は優雅な一日になりそうだ。
10/27/2024, 11:44:31 AM