『時間よ止まれ』
『空が泣く』another story
戸崎菜生 Tozaki Nao
遠坂蒼空 Tosaka Ao
私の好きな人は、幼なじみ。
例えて言うなら、空みたいな人。
おおらかで、広い心と視野を持ってて、みんなを優しく見守ってるところが空に似てる。
でも、一番の理由は、『いつもそばにいるから』
「菜生って、なんでわざわざ俺と一緒に登下校するの?」
もう高校生なんだから、いつまでも俺といる必要なくね?
なんて、、悪気が一切ない、純粋な疑問ってかんじで言う幼なじみ、、蒼空にちょっとイラッて、、。
そんなの気づけ!!って言いたい。
「んーいいじゃん!私が蒼空と一緒に登下校したいだけだもん」
理由なんてないよーって、私は本当に何もないように言う。
だって、、、ただの幼なじみとしか見られてないの、ちゃんとわかってるから。
「まあでも、俺も菜生と一緒に行ける方が楽しいしいいんだけど」
蒼空、、そういうのって、思わせぶりって言うんだよ、?
私の心を掴んで離さないその言葉が、ギュッと心を締め付ける。
言われて嬉しい反面、無意識で言ってるこれは他の子にも似たようなことを言ってる可能性もあって、、
正直複雑、。
「蒼空さ、彼女とかできちゃったらちゃんと報告してよね!いくら幼なじみでも、他の女の子と一緒に登下校してるって知ったら複雑だと思うし!」
なんて、蒼空を気遣ってるフリしながら、結局は自分が、誰かのものになってしまった蒼空と一緒にいるのが辛いだけ、。
一緒にいられる時間が僅かだとわかっていても、この心はいつまでもわがままで、この時間が一生続けばいいのにって、、、願ってしまうんだ。
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「入院、、」
「ここでは治療に必要なものが揃わないので、遠いですが、〇〇大学病院に行って下さい。」
「……っ、」
生きることを選び取れば、一生隣にいたかった人の元を離れることになる。
逆に、一生隣にいたかった人の元にいた所で、私の命は削られていく。
結局は、幼い頃に夢見た未来はないってこと。
「……入院、します。それで、手術受けます」
一緒にいられる未来がなくても、、、
また蒼空と笑い合える日が来る、、その可能性にかけてみようって。
それにさ、、もしももしもが叶って、私と蒼空が結ばれる運命なら、、、きっとまたどこかで会えると思うから。
たとえ、
30%の可能性でも____
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「蒼空。また、明日ね、」
「ん。じゃーな」
明日は来ない、、。
あーぁ、毎日蒼空と会ってたのにさ、、、
しばらくはロスだな、笑
家に吸い込まれていく背中を見て思う。
今、時間が止まってくれたらいいのに___
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手術を繰り返し、やっと治療は終わりを迎えた。
30%の可能性にかけたのは、正解だったみたい。
やっと、車椅子でなら院内を自由に動いていいって許可がおりた。
車椅子になれてないから動きはぎこちないけど、1人で動けることの自由さが嬉しかった。
ふと前を見れば、、、見慣れた背格好。
思わず声が漏れた、、
「蒼空、、?」
振り返った人物に驚きが隠せない。
「菜生、」
久しぶりに聞く蒼空からの名前が、、嬉しくて仕方ない。
でも、うまく反応できない、。
まるで、麻酔が抜け切ってない時のように、、思考が停止している。
いつの間にか私の前にいた蒼空は、私の大好きな笑顔でこう言ったんだ。
「……会いたかったよ、菜生」って。
今なら、、気持ち、伝えてもいいのかな?
「私も、」
君がずっとずっと大好きだよ、って
9/20/2023, 8:08:10 AM