「この命消える時まで、剣を捧げ、御身を守り続けることを誓います」
まだ何も知らなかったあの頃、騎士の正装に身を包んで私に跪き、初恋の人は私に忠誠を誓った。
そして、私の初恋はそこで終わった。
あの人にとって私は守るべき存在であり、対等ではなかったから。
そして、私がそれに気づくまで時間はかからなかった。
「主?どうかなさいましたか?」
今も昔も変わらず私を守ってくれるその人が私に問いかける。
「いいえ。何もなくってよ。」
ふふ、と笑って首を振る。
そう。何も無い。失恋したとしても昔も今も距離感は変わらない。
せめてその幸福を私は享受し続けよう。
視点転換
屋敷に火が回る。
逆恨みをした領民の一部が屋敷に火をつけた。
領主夫妻や次期当主は幸いにも留守にしていた。
残っていたのは主だけ。
「主……!」
無礼を承知で扉を蹴破る。
主はそこにいた。
「嗚呼、来てしまったの?
そのままお逃げなさい。」
「なぜ」
「私、何も間違った判決を下していないもの。
それなのに私が逃げるには行かないわ。
でも、あなたはなんにも関係ないから、どうか、にげて」
すっと、頭が冷えた。
「ふざけるな!あんたを置いて行けるか!
俺は、あんたに命を捧げた。
この命燃え尽きようとあんたを守ると、決めたんだ」
俺がそう言うと主は酷く驚いた顔をした。
あの日、まだ幼いあんたに忠誠を、恋心を捧げた。
「なんとしてでもあんたを生かす。どんな手段を使ってもあんたを逃がす。」
俺はそう言って主を抱え、窓から飛び降りた。
9/14/2024, 11:35:17 AM