嵐が来ようとも、私には関係無い。
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何度も何度も繰り返し、日の届かない暗い箱で私は歌い舞う。
「あぁ、ロミオ、貴方はどうしてロミオなの?」
カーテンコールが終われば、金の雨が降る。
私の声を求め、人々が集まる。
華やかで、美しく、暗闇に囲まれた日常。
しかし、世界は絢爛豪華なハッピーエンドを許さない。
モンタギューによってすり替えられた毒薬によって私は声を失った。
声を失ったジュリエットなど、腐った林檎程の価値も無い。
私はステージを追い出された。
1人、嵐の中に立ち尽くす。
遠くから微かに聞こえる歌に合わせて腕を持ち上げる。
きっと今は私ではないジュリエットがロミオに向かって愛を囁いているのだろう。
モンタギューの高笑いが聞こえる気がした。
でも、お生憎様。
私はジュリエット。
愛するロミオの為なら命すらも差し出した女。
私にステージなんて要らないのよ。
結い上げていた髪を解き、中空に向かいカーテシーをする。
そして私は雨の手を取る。
風と呼吸を合わせてステップを踏む。
掠れた声で歌うのだ。
街灯にかかる水滴が花火の様に弾ける。
嵐が来ようとも、彼すらも私の味方。
さぁ、待っていてロミオ。
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2024.7.29°
「嵐とワルツを」
7/29/2024, 1:40:29 PM