世界に靄がかかった時、終わりが近づいていることを知った。白の病室。窓辺に座る君の優しい瞳。その手に触れていれば私は幸せだった。苦しみも恐怖も乗り越えられた。一つ心残りがあるとすれば、君より先に行ってしまうことが申し訳なかった。
やがて私の世界は光を失い、音を失い、感触までもが遠のいていく。暗い、暗い、海の底へと沈むんでいくように閉じていく。ゆっくりと、世界が閉じていく。
最期に残ったのは君の微かな体温だった。私と君を繋ぎとめる温かな光。私には解る。君が微笑んでいるのが解る。君が私を愛していて、私が君を愛していることが解る。世界の終わりに君と手を繋いでいることが解る。
ありがとう、愛しの人。一足先に向こうで待っているよ。君はゆっくりとおいで。私はずっと君のそばにいるから。
6/7/2023, 12:20:25 PM