未知亜

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結局いつも雑魚寝になってしまうな。
空いた缶をビニル袋に放り投げ、所謂パーティ開けされたスナック菓子の袋を雑にまとめる。
俺の下宿が大学のすぐそばで。
ゲームしたりダベったりにちょうどいい溜まり場になっていた。

誰かトイレに起きてもゴミを蹴飛ばさない程度には通り道が出来た。
ちゃんとした片付けは起きてからやろう。
あとは……。

男共はほっといて、女子二人には何か掛けておこうと思ったが、普段使いのブランケットでは気が引ける。
しばし考えて、引き出しの奥から大きめのタオルを引っ張り出した。
去年の夏フェスで買ったきり使っていないから、臭ったりはしないだろう。

ベッドにもたれかかったみっちゃんの肩に、先にそれを掛ける。
そんな気持ちないのに、なんか無駄にドキドキした。

カナちゃんは、グラスを握り締めたままテーブルに突っ伏して寝落ちしていた。
睡魔に襲われる数分前まで、俺の知らん男の同じ話を延々していたカナちゃん。

指先をグラスから剥がすように解いて、目尻に白く残る涙の跡に気づく。
こんな近くで顔を眺めたのは、初めてかもしれない。

彼女はさっき泣いていただろうか。
欠伸を連発していたから、単にそのせいかもしれない。
近い将来、人知れず泣いた彼女の痕跡を、この距離で誰が見つけるのだろう。

嫉妬とも呼べないモヤモヤを抱えて派手な色のタオルをそっと掛け、俺はその傍に雑に横になった。

『涙の跡』

7/27/2025, 2:41:24 AM