Nonexistent person

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ただいま、夏。

今年もあの季節がやってくる。
潮の匂いが鼻をくすぐり目の前の青を駆け抜ける清々しい季節。
何時もの道を抜ければ前までは君がいて私も泡が弾けるように肩を揺らして大きく笑いながら遊んだあの海がある。
沖縄やハワイ何かみたいな透明感は持ち合わせてないけど絵の具をパレットからそのまま落としたような深くて濃い青が私を癒してくれた。そんな場所。
だけど違う。
そこは癒しだけど癒しじゃない。
癒してくれる優しさと何かが消える表裏一体な関係で存在していたって思い知ったから。
君が消えた日に鳴ってたあの音が私の脳裏に突き刺さって海月の毒の様に今でもずっとトラウマという形でしがみついている。
行きたくないのに行けば君が見える気がして、何時かまた何処からか顔を出して前みたいに笑いながら何時も通りに話してくれる気がしてずっとずっと囚われている。
誰もいない砂浜、街灯と初夏の星に照らされた綺麗な光の糸を紡ぐ海には今日もまたあの音が鳴る。
招かれざる客が此方を覗いて笑っているから。

8/4/2025, 11:29:45 AM