aoicafe0105

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命が燃え尽きるまで、君といられたらよかったのにと、思う。花束が君の目の前に置かれている。それに触れることもなく、時が止まったかのようにずっと動くことなく花束を見ている。次第にあたりが暗くなる、僕は行くあてもないので近くの路地裏で眠る。彼女がどうしてるのかは知らない。明くる日も彼女は花束の前にいた、次第に花が枯れていく。彼女の表情は曇ったままである。幾日かして花は新しくなった、誰かが取り替えたのだろうか?彼女は相変わらず無表情のままである。その子を見ている私もそうではあるが、あの女の子も往来を行き交う人たちには邪魔じゃないのだろうか。
ある日の夜、大きな音がし、目が覚めた、路地を抜けると彼女がいつも居る場所に車が突っ込んでいた、幸い彼女はいなかったようだが、その場所にぐったりと倒れている人がいた、あたりに人気はなく、そもそも僕が電話というものを持っているわけでもない、運転手はそのまま人を残して去っていってしまった。
既視感があった、車が突っ込んだ様子が脳裏に浮かんだ、誰かを庇うようにして誰かが飛び込んでいる、そのあとがどうなったのかはわからない。
次の日からも変わらず彼女はいた、そしてその隣にもう1人女の子が増えていた。あの子は誰なのだろう、昨夜の事故で亡くなったかたの知り合いだろうか。
いつの間にか彼女のいる場所は事故の名所になっていた、よく車が突っ込む、カーブの先の交差点は見通しが悪いというが、だからなのかそれともその場所が呪われているのか、よく深夜に車が突っ込んで横断歩道を待っている人が轢かれていた。亡くなられた方がいたときは次の日から花束の前にいる人が増えた、1人増えることもあれば複数人増えることもあった、その度に亡くなられた方生前色んな人に愛されていたんだろうなと思った。僕が死んだ時に花束をたむけてくれる人はいるのだろうか、きっといないと思う、いるなら路地では過ごしていないと思う。
花束を見ている人たちは昼間の間その場所にいるが、どうして呪われた場所にいるのだろうか、本当に好きな人が亡くなって心意喪失してその場所にいるのだろうか、どうして彼らがいなくなる夜に事故が起きているのだろうか。
また事故が起こった、今度は突っ込んできた車から誰かを守ろうとして車に突っ込んだ人が亡くなった、路地前に怪我した体があった、刹那全てを思い出した。
“僕”は“彼女”を事故から守ろうと車に突っ込んだのだった、詰まること、僕は生きているのだろうか?いや死んでいるのだろう、命の限り君を守ろうと車に突っ込んでここまで飛ばされている、そもそも生きているならおうちに帰れているはずである、路地裏は僕の家ではないはずである。いや路地裏から“動けない”からそもそも人間ではないのだろう。よくいう地縛霊なのだろう。では彼女は?ずっといるということは地縛霊なのだろうか、人が死ぬたびに人が増えていたのはあそこに地縛していたのだろうか、夜に見えなかったのは暗かったからで、本当はそこにずっといたのかもしれない。命が燃え尽きるまで君といられたのなら、こうして気づかれずに見守るのではなく、自分がどういうものなのかに気づけたのだろうか。
ところで、あの花束は誰が取り替えていたのだろう。彼女じゃないなら。僕か彼女を大切に思う人が来てくれていたのかもしれない。その人がこちら側に来ないことを地縛霊としての命が燃え尽きるまで祈るのみである。


お久しぶりです、稚拙なものではありますが、またよろしくお願いします。 蒼井ましろ

9/14/2024, 3:02:40 PM