喜村

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 息苦しさで目が覚めた。
 何やら身体は、じっとりと湿っている。そんなに私は汗をかいたのだろうか。
 しかし、その異様なまでの暑さと呼吸のしづらさで、それではないと理解した。
 アラームではない、けたたましい音も聞こえる。

--これは、火事ではないか!?

 働かない頭でも、本能でそう理解できるくらいに、状況がいつもと違っていた。
 ここは高層マンション。私の部屋は12階。
 火元がどこかもわからないが、窓からは赤とオレンジと黄色の炎の色と真っ黒な煙が目視できた。
 意を決して窓を開ける。窓ガラスは素手で触れたものではなく、カーテンと共にあけた。

 熱い。ただただ、熱い。
 息を吸うだけで肺が焼かれているのではないかと思う程に。
 このままでは、すぐにこの部屋も燃えてしまうだろう。

--逃げなければ……!!

 そう考えてからは早かった。
 何も考えてはいなかった。
 ここは、12階だが、死ぬ高さではないと錯覚していた。

 涼しい。
 熱さからの解放は、これほどまでも清々しいのか。
 助かった、これで焼け死ぬことはないだろう。
 私は、ただただ下へと落下した。
 下へと辿り着く前に、私はまた意識を失った。

@ma_su0v0





【落下】

6/19/2024, 9:00:49 AM